塗装の目的・時期

吹付けと手塗りについて

塗装方法を大きく分ければ、機械を使って吹き付ける方法と、ローラーと刷毛で塗っていく方法の2パターンがあります。
ですが、どちらにも一長一短がありますので、一つの現場でも両方使って施工した方が、効率も美観も良い場合もございます。
逆に、どんな状況でも、どちらか一方の工法だけという考え方はナンセンスです。

ただ、吹付は使用できる環境と言うのは見極めないといけないので、必然的に手塗りで行う割合が多くなってきてはいます。

吹付工法

吹付工法とは、機械を使って塗装する工法です。
吹き付けの機械も、1種類だけでなく、用途に応じ様々な機械があります。
よって、装備(機械)がないと施工できないので、手塗りよりも、吹き付けができる塗装店の方が、現在は少ないかもしれません。
当店では、吹付で行う場合でも、ローラーも併用での施工が基本となります。

  • 吹付の長所

    • 塗装仕上げの種類は、手塗り工法よりも、吹付工法の方ができる事の幅が広いです。
      例えば、タイル吹き・タイル押さえ仕上げ・スキン・リシン・スタッコ・多彩模様仕上げ等は、吹付でなければできない塗装仕上げです。
    • 細かい部分の塗装の際に、手塗りでは時間は掛かる上に、きれいにならない事もあるが、そういう場合に吹き付けだと、簡単にきれいに仕上げれる事もあります。
    • 刷毛目やローラー模様を気にする必要が無いので、隅々まで塗布面の仕上がりが一定で、吹き付けの方が手塗りよりも綺麗に仕上がる。
    • 摩擦が掛かりにくい面は、手塗り(刷毛やローラー施工)だと塗料が滑り透けて薄いけど、そういう時に吹付であれば、透けないので塗料をより多く被せれる。
    • 塗装するスピード自体は、手塗りよりも早いので、養生(ビニール)で覆われている日数が、場合により早くなる事もあり、お客様への負担の軽減に繋がる場合もある。
    • ラインを出す時は、手塗りよりも圧倒的に綺麗に仕上がるし、時間も掛からない。
  • 吹付の短所

    • 塗料を被せる事ができる分、手塗りよりも塗料を多く使いがちになる傾向はある。
    • 飛散力という意味では、基本的に手塗りよりも高くはなるので、細かい養生が必要で、それには時間が掛かり、養生の使用量も多くなる。
    • 足場の良し悪しや環境により施工できない、もしくは、施工しにくい場合もある。
    • 細かい巣穴があるような素地に吹付をする場合は、巣穴の奥までは入りきらないので、そういう場合は、ローラーで押し込む必要がある。
    • 機械のメンテナンスが必要になってくる。
    • 弱溶剤塗料の吹付けは、環境条件が良い場合や、養生に工夫が無いと飛散の影響があるので使用しづらい。

手塗り工法

手塗りとは、いわゆるローラーと刷毛を使用する工法です。
現在の世の中では手塗りでの施工が、スタンダードなので、手塗りができない塗装屋はいないと思います。ある意味では、刷毛とローラーさえあれば、すぐに塗装店を開業できるとも言えます。
根気さえあれば、素人の方でもDIY(do it yourseif)でできなくはないです。

  • 手塗りの長所

    • 手塗りですと、完璧に密閉する養生は必要ないので、吹付より養生は楽である。
    • 手塗りでも飛散しないわけではないが、吹付よりも飛散に気を遣う必要性は減ります。
    • 巣穴があるような壁面にはローラーで押し込む以外に方法は無いので、そういう素地には適している。
    • 最近では、手塗り専用の塗料も少なからずある。
    • 下地調整材に微弾性塗膜の厚付け施工は、手塗りでのみ可能。
  • 手塗りの短所

    • 壁にパターンを付ける塗装仕上げが、マスチックローラー工法のみなので、施工の幅が狭い。
    • 施工スピードは遅い。よって、刷毛塗りが必然的に多い現場では、養生(ビニールで非塗装面を覆う事)を貼っておく日数が長くなる事がある。
    • 素地が滑らかな面程、ローラーでは塗料が透けやすく、塗料を置いていかないので、規定塗布量の塗布が難しい。
    • ローラーや刷毛の毛は、必ず抜けるので、塗装後、塗布面にそれが目立つことがある。
    • 吹付のような機械のメンテナンスは不要ですが、ローラーはすぐにダメになるので、再々取り替えは必要で、そうしないと壁面は塗れても、塗布量が少ない。
    • スレート屋根などの塗装をする時には、必要以上に塗料が入り込んでしまう事があるので、それに対する対策が必要になる事がある。
    • 外壁の見切りが無い部分で色分けをする時、ラインが綺麗にならないし、時間も掛かる。

現場的な見解

吹付と手塗りのどちらが優れているかどうかを議論するのは無意味な事で、どちらの工法にも、一長一短ありますので、お互いの短所を補うためにも、どちらも扱えるに越す事はありませんし、それでこそ塗装職人と言えます。
現に、国家資格の塗装技能士の実技でも、吹付けを使う必要があるので、手塗りだけできれば良いというものではありません。

当店では、吹付けで施工する場合でも、ローラーも併用しますし、逆に手塗りの現場でも、吹付の工程を入れる事もあります。
お客様からご要望がある場合は、手塗りだけにも柔軟に対応していますが、適材適所で両方使える施工の方が、確実にきれいに仕上がります。

フランチャイズ的な考えでは、施工していません

塗装の歴史を辿れば、大昔は刷毛塗りから始まり、ローラー、機械吹き、と進化してきているのに、現在は機械吹きと聞けば、ただ飛散するのではと思われがちな風潮があり、それゆえ刷毛やローラーを使った退化した施工に傾きがちな塗装業界ですが、吹付の技術とは吹く事だけではなく、近隣に迷惑を掛けないように養生をするのも一つの技術であります。

現在、インターネットの影響もあり、偏った考え方が多すぎて、手塗りを美徳としている塗装屋や、そう思い込んでいるお客様もいらっしゃいますが、手塗りだけが塗装屋の仕事だというなら、それは考える事の放棄や、非効率の押し売りで、職人のアルバイト化や、塗装業をDIY化させる行為に他ならないと思います。

塗装業だけでは無い話ですが、今の世の中は、腕が上手いから、受注が多い店とか、地域一番店とか、人気がある店というのものではなく、営業的手法(売り込み)やお客様対応に長けた会社を作れば、それが営業会社であれ、自社職人施工では無い店であっても、会社を大きくできる世の中です。

もっと言えば、塗装に特段知識も無い経営者でも、ビジネス的な手腕がある人なら、塗装業を通して会社を大きくもでき、フランチャイズ化もし易いわけです。また、塗装業は、フランチャイズへの加盟を募集する会社や、ノウハウを提供している会社がいくつもあるので、急成長させようと思うなら、そういう手法を疑いも無く素直に取り入れれる人こそ、伸びていくと言っても過言ではありません。

そんな塗装業界は、一見、大きな額を扱う仕事ではありますが、実際にはそれほど利益を見込める職業とは呼べない仕事です。
今の日本は、ご存じの通り、物価だけはずっと上がっているけど、給与水準が20年や30年前から変わっていないのが現実で、そんな中で、塗装業で利益を確実に得るには多売的に手広くやっていくしか無い世の中になってしまい、儲けを意識するには、一か月に何十棟も施工するくらいでない限り、なかなか潤う経営者になるのは難しいわけです。

では、それだけ多くの棟数をこなす際に、各現場で職人の施工方法がバラバラだったら、施工する部隊によっては、クレームになる事も否めないわけです。よって、そうならないようにするには、全ての施工部隊に同じような(無難な)やり方を定着させ、ルーチンワーク的に徹底にした方が、クレームが少なくなるわけです。

その為に、施工する人間の手に左右されにくいのは、吹付よりは「手塗り」で、しかも刷毛よりもローラーを多用するやり方で施工するなら、あとは養生さえ学べば、ほぼ誰でも一通りの仕事はできるわけです。
要は、機械的に動いてもらう人材作りこそ、会社を大きくしていき易い方法であり、そういう塗装店が増え、それらに都合の良い情報の発信量も多くなってきた事から、「手塗り」というワードが特に認知され易くなっている風潮があると感じます。

当店は、塗装の仕事をマニュアル化して広めていくような、フランチャイズ的な塗装店を目指しているわけではありません。
あくまでも塗装という仕事に関すれば、オールマイティーに施工できて、目の届く範囲で施工する自社職人施工の店でありたいだけであります。

職人的な考えで施工していれば、工法によって良い悪いというのは、浅はか過ぎると思いますし、それらを駆使して、補えない物を補う臨機応変性があってこそ、職人の仕事であると考えています。良い完成品を目指す為に考えて施工するというのは、そういう事だと考えています。

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